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◆幻想水滸伝(パーシヴァル中心に全シリーズ)をメインとした趣味の二次創作・固定ヒロイン夢小説を扱ったブログです◆各版権元製作企業・関連会社とは一切関係ございませんが著作権は筆者さやなにあります◆
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さやな

Author:さやな
寒いと生きていけないと言いつつ
我が家は恐ろしく寒い
ということは実は寒さに強いのかもしれません

モノ書きするくせに筆不精な自分が歯がゆい今日この頃

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幻想水滸伝3・パーシヴァル夢 【 鍛冶屋と騎士とワンピース 】

変わり者のヒロインの一風変わった日々とパーシヴァルとの交流。
















【 鍛冶屋と騎士とワンピース 】

















 湖に面するその古城はつい数ヶ月前までの閑散とした様子などまるで無かったように今は生き生きと賑わいでいる。そんな賑やかな昼下がり、古城の一室のどこかから、ごそごそと潜むような物音が漏れている。カーテンの締まり切った薄暗い部屋で、その物音はどうやら布団の中から聞こえるようだ。
 物音の正体はついに思い切って布団を蹴り飛ばすと微かにカーテンの隙間から入り込む明かりに釘付けになった。そうして勢い良く窓際まで駆け寄りカーテンを開けてはその眩しさに一瞬眩暈を覚えてふら付いた。
「今、何時だよ。おい……」
 呆然と漏らした独り言は何故か返事が返って来た。
「昼過ぎだ、馬鹿」
 その酷く低音な声に“彼女”は肩を竦めた。恐る恐る振り返ると、恐らく自分が寝ぼけているうちにドアを蹴り飛ばして開けたのだろう長いお御足をドアに貼り付けたまま、嫌な笑顔を浮かべた男が立っていた。
「おはようございます、パーシヴァル殿!!」
 “!”が付くような勢いとは裏腹にまるで棒読みなご挨拶を並べると、彼女はあははと誤魔化し笑いを浮かべたが次第にそれは頭と共に地面へ落ちていって溜息に変わった。そうして地面とご対面すると素直に謝罪した。
「ごめんなさい」
 溜息を吐きたいのはこっちの方だと言わんばかりにパーシヴァルが息を吐く。
「宜しい」
 まるで宜しくなさそうではないか、という突っ込みは非のある彼女は口に出来ない。本当に本当にごめんなさいごめんなさい……!と捲くし立てるように何度も平謝りしてから、長身の彼を窺うように上目遣いで見上げて彼女は聞いた。
「どのくらいお待たせしましたか?」
「……30分」
「つまり、今は13時半」
「そういうことになる、な」
 その答えを聞いて彼女は再びはぁ~と溜息を吐いた。
「俺はそれなりに忙しいのだが」
 そんなことは彼女もわかっている。一分待ってと言って寝巻きのままの彼女はバタバタと身支度を始めた。ちなみにドアは開きっぱなしである。パーシヴァルは入り口に立たせたまま。女の癖に彼女は本当に一分で身支度を整えた。
 彼女の名はミニー・ローランド。これでも一応、性別は女だ。と、言っても――女なのはまるで見かけだけで女らしさの一片も無い。変わり者も多く集まるこの古城に居ながら、五本の指に入る変わり者とでも言っておこう。そんな彼女がこのお話のあくまで主人公なのである。



「なんでお前がそんなぶす暮れた顔するんだよ」
「違う。落ち込んでるの」
「落ち込め、落ち込め。下手すりゃ俺は昼食抜きなんだ。大いに落ち込め」
「悪かったって。代わりに時間は取らせないから」
 そんな遣り取りをしながらふたりが向かった場所は地下の倉庫である。
「やあ、ミニー!書置き通りちゃんと運んでおいたよ~」
 いつでも陽気でのんびりなコボルトの倉庫番、ムトの陽気な声が些か今日は憎らしい。
「ありがとさん」
 そうして倉庫の鍵をさっさと開けるように促した。のんびりとカウンターから立ち上がり彼が鍵を開けに向かった部屋は主に武器・防具が仕舞われた倉庫だ。どうぞと促されてふたりが入る。この類は比較的出し入れが頻繁なので倉庫特有の臭いはあるが、それ程埃っぽくは無い。ずかずかとミニーが先を進んで行く。これとそれと、あとあっちの――と次々と指を差して後ろに続くパーシヴァルに促す。
「もしかして徹夜だった?」
「おかげさまで。だからばっちり。確認宜しくお願いします」
 書類を片手にひとつずつパーシヴァルが確認を入れて行く。
 その様子を壁に寄り掛かって見つめながらミニーはひとつ欠伸をした。
 ふたつ目の欠伸が込み上げて大口開きそうになった時、確認を終えたパーシヴァルと目が合った。
「ばっちり?」
 欠伸を飲み込んでそう尋ねると、ご苦労さんという労いが返って来た。
 昨日の晩は大忙しだった。鍛冶屋のペギーとミニー、防具屋のドミニク、三人で死に物狂いで作業してどうにか納期に間に合った。
 ひとつ戦が終わると工場は戦場と化す。壊れた武器や防具の修復が大量に発生する。これをある程度早い期限で終えてしまわないと、後に訓練中などに発生する個々の調節を行う時間が無くなってしまう。なんと言っても寄せ集めの臨時の連合軍、戦や訓練の度に随時様々な調整が発生してくる。
鍛冶の腕に覚えがある者総出で数日間工場に篭もり切りの作業となるのだが、職人の数と比べて如何せん兵の数が多過ぎた。グラスランドとゼクセン騎士団に、その他諸々の場所から集まった連合軍である。その数が半端無い。簡単な物から順番に片付けていって残るのは少々難易度の高い代物で、そうすると後は腕利きだけの仕事となる。いつもは割りと暇でミニーなど鍛冶以外の仕事の方が多いというのに、こういう時は逆に猫の手でも借りたいところだ。技術が伴う限り無理な話だが。
「昼食は食べれそう?」
「おう、付き合えよ。お前は朝飯か」
 そう言ってふたりは揃ってレストランへと向かった。
 そう言えば、と思い出したようにパーシヴァルの視線がミニーを捕らえた。
「お前さ、一分で身支度終わるのは良いけれど――」
 そう言いながら全身に刺すようなパーシヴァルの視線が正直痛い。何が言いたいのか大体わかっているが、こればかりは興味がないのだからどうしようもない。
「女らしくしろって?」
 言われる前に一応返してみた。
「その前に、あの着替えはどうかと思うぞ」
 全く持って、可愛らしいのは頭の上で揺れるポニーテールだけだ。ポニーテールと言ってしまえば可愛らしいものだが、ミニーの場合、ただ単に邪魔だから上で括られているだけと言って過言ではない。
 あの見事に繰り広げられた一分間を思い出しただけでパーシヴァルはげんなりとする。
 まず最初に、寝巻きの下にパンツを履き込み、それから盛大に寝巻きを脱いだ。タンクトップ一枚になったその上にシャツを一枚被って首元にそこら辺にあった布を巻いて、髪を高いところで纏めて……ブーツに足を突っ込んで終わりである。
 無頓着でいつもシンプルだが、正直なところミニーはセンスが良いと思う。だが、あれを見てしまうと閉口する以外どうしようもない。あれは流石に無しだと思うのはパーシヴァルがお洒落に精通しているからではないと思いたい。
「手っ取り早くて良いじゃん。動き易いし。合理的じゃない」
「だからって人前は止せ」
「いいじゃん、別に。パーシヴァルだもん」
 あっけらかんとそう言うミニーに、パーシヴァルは俺は一体お前のなんだ?!と突っ込みたくなった。突っ込みたくなったが突っ込むのも馬鹿らしいかった。



「あのねぇ、あたしはあんたたちみたいな上流の人間じゃないんだから。小難しいお洒落を要求しないでよ」
「小難しいってお前な。……だから男も出来ないっと」
 レストランに着いてさっさと注文を済ませて今は料理が来るのを待つだけの状態だ。ふたりは今も先程の話題を引きずったままだ。
「余計なお世話だ。興味がないだけだよ」
「そんなこと言ってると行き遅れるぞ」
「おかんか、あんたは」
 料理を持ってきたウェイトレスがクスクス笑いながら去って行く。近くのテーブルを片付けていた違うウェイトレスも笑いを堪えているのが見え見えだ。昼の混雑時を少し抜けた時間帯、客も大分疎らで代わりに声も良く通る。だがふたりはくだらない議論に夢中で気付いていない。食事をぱくぱく口に運びながらもおしゃべりは止まらない。
「例えばだ」
 そう言ってパーシヴァルは行儀悪く持っていたスプーンをつんとミニーに突きつけた。
「自分で選ぶのが小難しいとか言うならば。貰いものなら素直に着るのか?」
 ミニーといえば、少し考えてから徐に首を捻った。ひらひらした可愛らしいワンピースに身を包む自分をうっかり想像してしまった。
「……勘弁願いたい」
 あまりにもげっそりとした表情でミニーが言うものだからパーシヴァルは思わず噴出した。
「要するに、着るわけだ。ってか何がそこまで嫌なんだ?」
 ここまで来ると素直に疑問に思う。しかしミニーの言い分は至って単純明快だった。
「動き辛いじゃんか。服は機能的に限るだろ」
 用途が違うだけで、ワンピースが機能的でないわけではないのに。
「良しわかった。今度お前に似合いそうなヤツ見繕って来てやるよ」
 思い知るが良い。というより、急にお淑やかに振舞うミニーを想像したら物凄く面白そうだと思ってしまった。これは決行あるのみである。どうせならひらっひらのを!――そうだな、暇な時にでもジーンさん(よりにもよって!)あたりに伺いに行ってみよう。
 そんなことを思いながらさっさと食べ終えたパーシヴァルは面食らっているミニーを残して席を立った。



 ミニーは元々ただの旅人だった。本職は鍛冶職人だと彼女は言っているが、それまでにやっていたことは旅の資金調達のための傭兵家業が殆んどである。
 そんな彼女が今、連合軍の本拠地であるこの古城に身を寄せているのはリザードクランの大空洞で鍛冶職人のペギーと仲良くなったからである。ペギーが古城へ拠点を移すことになり、暫く手伝え!!と半ば強引に連れられて来たのがきっかけだ。
 そもそも、なんで彼女が大空洞などにいたのか。それは――。
 グラスランドの情勢悪化に伴い、旅の途中の彼女は暫く動かない方が良策だと思った。そうして彼女が選んだ滞在場所がリザードクランの大空洞だったのだ。可愛いダックの村と散々迷ったが彼女は敢えて大空洞にした。涼しいし、何よりリザードの見た目と中身のギャップが彼女の中でツボだったのが一番の理由だ。
 大空洞に好んで滞在している人間、という時点で十分彼女が変わっていることはわかるだろう。更に、あのペギーと仲良しなどと言われれば周りに変な人という印象を与えるのに十分過ぎる。
 彼女曰く、「ペギーってホント面白いよね。あのしゃべり方」である。ペギーと彼女の会話は噛み合っていないようできっちり噛み合っているから不思議である。あのペギーが相手だけに、鍛冶職人同士気が合うとかそういう次元ではない。神業だと周りではこっそり崇められている。
 その他に、彼女の仲の良い人間と言えば――紋章師のジーン、道具屋のゴードン、鑑定士のギョーム、司書のアイク……などである。(ジーンには些か失礼だが)揃ってキワ者ばかりである。
 彼女のそんな愉快な交友関係の片隅にパーシヴァルも居るわけだが。彼女に言わせれば、彼も彼らと同じくらい面白いらしい。良い迷惑だと言いたいところだが、パーシヴァル自身もミニーのことを気に入っているのでそこは目を瞑っている。
 元々徹夜明けの今日は休日だった。既に昼過ぎとあっては休日と言っても大した事も出来ない。夕方になったら武術の鍛錬でもしようか。そんなことを考えながらミニーはふらふらと城内を散歩して回っては馴染みの所へ顔を出していた。
「おや、今日も貴方は素敵ですね」
「ありがとう。貴方もね」
 そんな挨拶が定型句となっているのはゴードンである。
「さっき無頓着すぎるって誰かに怒られちゃったけどね」
 業と大げさに芝居掛かった風に言ってみると、ミニーは何故か本気で落ち込んできた。なんでだろう?と自分事なのに首を傾げた。
「そりゃそうだ。何やらかしたの、君?」
 興味深々に割り込んで来たのは、たまたま居合わせたミニーの愉快な友達のひとりにカウントされる男だ。この男、ナッシュの運の無さは天才的である。
「別に何もやらかしちゃいないよ。急いでて寝巻きから一分で身支度整えたらドン引かれた」
 ゴードンが優雅に口元に手を当てて笑いを堪えている。
「百年の恋も冷めるような早着替え……」
 そう呟いてから彼は躊躇いもなく笑った。ナッシュと言えば物凄く哀れなものを見る目でミニーを眺めている。今更ドン引く間柄でもないが、ドン引いているのだろう。
「ミニー、そういうのが許されるのは明かりが落ちている舞台袖だけですよ」
 優雅な微笑みを浮かべてそんなこと言われても……。演劇に詳しくないミニーとナッシュが聞いても面白さがいまいちわからない。返す言葉が見つからない。
 ナッシュは引き攣った笑いを浮かべながら、居合わせなきゃ良かったと心底思った。が、横を見るとミニーはさも当然そうにこう返した。
「急いでるのには変わりないじゃん。同じだよ」
 真顔でそう返したミニーを見てナッシュはやっぱり思った。居合わせるんじゃなかった……。



 ミニーの鍛冶の師匠は、鍛冶の腕はさながら武術に関しても達人の域に達するその道では少し有名な人物であった。“達人”というのはどの分野に関しても少し変わった人物が多い。彼女の師匠も例に漏れず、やはりその道では変わり者で有名な人物でもあった。師弟共に知る者があれば、間違いなく、この師にこの弟子ありと言うことだろう。
 彼女は日が傾きかけると古城の裏庭で武術の鍛錬に勤しんだ。その方法はここいらでは目新しいものらしく、目撃したものは一様にまず釘付けになる。
 それから彼女はたまたま鍛錬後にその場で出くわした白竜のブライトとおしゃべりを楽しんだ。ブライトの相棒である竜騎士のフッチ曰く、会話が成り立っているらしい。そんな彼女は虫兵のルビとも仲が良い。彼女とは専ら恋話で盛り上がっているらしい。
 一頻り遊んだミニーはのんびり風呂に浸かってさっぱりすると、ご機嫌な足取りで夕食も兼ねて酒場へ向かったが、肌寒くなってきたので一旦自分の部屋へ戻って上着を一枚着込んだ。この着古したお気に入りのカーデガンはグラスランドではあまり見られないデザインと布地であった。彼女曰く、南の方のどっかの民芸品らしい。が、本当かどうかは定かでない。
 そうして今度こそミニーは酒場へ向かった。
「あら、久しぶり。修羅場終わったのね」
 そう言われてみれば久しぶりだなと思いつつ、アンヌにいつものやつを注文した。いつものやつというのは、余程の酒豪でなければ手を出さないような度のきつい酒である。ミニーはそのキツイ酒を顔色も変えずに嗜む。アンヌの思い当たる限りミニーが酔っ払ったのはただ一度きりだ。酒好きで飲み比べをしてアンヌが全員を潰したその時だけだ。
 ミニーが酒に続いて注文した夕食を食べ終えた頃、酒場は常連客で賑わい出した。そうなるとすぐに、半分くらいのテーブル席は意味を無くしてドンチャン騒ぎが巻き起こる。彼女ももちろんその輪に混じってご機嫌である。
 さて、今日の肴は何であろうか――。
 いつもなら聞きかじった面白話を振りまく側だったのに、今日に限ってミニーは話題の中心人物にされてしまった。
 というのも……昼間レストランで交わしたパーシヴァルとの漫才があっという間に耳聡い誰かの耳に届いていたらしい。あれやこれやと面白がりつつ頻りに女らしくしろと八方から言われてミニーはむっと頬を膨らまして酒を仰いだ。
 どいつもこいつも。そんなのあたしの勝手だろう!と悪態吐きつつ、またこっそり首を傾げた。勝手だろう!と思いつつ、どうにも何かがどっかに引っかかった。
 剥きになって色々と反論しながら今日は酒がやけに進んだ。修羅場開けの開放感からかいつもより些か弾けているような気が自分でもあったのだが――弁えているほどほどを通り過ぎそうになると瞼が少し重くなってきた。ミニーはそっと盛り上がる輪から抜け出してちょこんとカウンターに腰を下ろした。
「眠いなら部屋に帰りなさいよ」
 アンヌにそう言われながら生返事を返す。
「ちょいと覚ましてから。こんなとこで寝ないって。廊下で寝るのも後で色んなとこから雷落ちそうだから覚ましてから」
 呂律がしっかり回っている当たり、酔っているというよりは眠いだけらしい。だったら目を覚ましてやろうとアンヌは構わず話続けた。
「なんか、あんた落ち込んでるわけ?」
 と、真っ直ぐに少し据わった目でメリーはアンヌを見据えた。
「なんで?」
 ぶっきら棒に、でも真っ直ぐにそう言われてアンヌは一瞬言葉を呑んだ。
「それ、あたしに当たることなの?」
「違う。言い当てられてびっくりしただけだよ。でも、自分でも何で自分が落ち込んでるのか解からんのよ」
「それはご愁傷様」
「ではごちそうさま」
 ふらっとした足取りで酒場を出て行くミニーを見送りながらアンヌは微妙な気分になった。
「ミニーが、恋……?」
 そんな彼女の呟きはあっという間に酒場の喧騒に掻き消えた。



 ぼんやりと自室へ向かいながらミニーは思った。こんな時は何だか人恋しいね。そんなことを思いながらも彼女はさっさと部屋に戻ろうとしているのだから何か矛盾している。
 直後、ミニーは今までのアンニュイな気分を吹き飛ばすような叫び声を上げる。
「ぐわっっっ!?」
 女らしさも可愛げも何処にも存在しない見事に潰れた叫び声だ。
 ぶつかったのは人で、しかも相手は会いたいような会いたくないような気がしていたパーシヴァルだった。何だか解からないけれど引っかかる何かの原因がパーシヴァルであることだけははっきりしていたからだ。
「前見て歩け、酔っ払い」
 良く知っている声にごめんごめんと謝りながら顔を上げると、ミニーはすぐに視線を下に戻した。何だか今日は嫌に地面が恋しいらしい。
「飲みすぎちゃって眠いんだよ」
 肩を落としてそう言うと、パーシヴァルと一緒に居たボルスが驚愕したのが良くわかった。思わずミニーは反論した。
「あのねぇ、あたしだって女の子なんだから可愛く酔っ払うことだってあるんもん!」
 要するに酔っ払ってんじゃないか。パーシヴァルとボルスは顔を見合わせた。



「お前、歩きながら寝るなよ?」
 ミニーが寝てしまいそうで仕方なくパーシヴァルはぶつぶつ声を掛けながら彼女の手を引いた。
「寝ないってば、眠いんじゃなくて酔っ払ってるだけだよ」
「眠いだけで酔っ払ってないんだろ」
「え~、わかんな~い」
「やっぱ眠いんだろ」
「なんでこれでそっちになるわけよ」
「ほら見ろ。酔ってないじゃねぇか」
 どうにか部屋まで引っ張って行って、起きたまんまの部屋に放り込もうとしたら――突然ミニーが「目が覚めた!」と言った。
 「面倒くさい酔っ払いだな」と言ってやると、いつもの調子で「そりゃどうも」と返って来た。本当に眠かっただけらしい。
「もう帰っちゃうの?」
 そう言ったミニーの声は少し甘えたに聞こえた。
「帰って欲しくないのか」
 いつもの調子を装ってそう返したのに、ミニーは随分といつもの調子と違っていた。
「……人恋しいんだよ」
 投げやりとも取れるし、本当に淋しそうにも取れるし。良くわからないけれどパーシヴァルは慰めてやらなきゃいけない気がした。子供をあやす様によしよしと抱きしめて頭を撫でてやるとミニーは妙に静かだった。不味かったかと慌てて手放すと、ミニーはじーっとパーシヴァルを見つめていた。何を考えているのかさっぱり読めない。
 ややあって、ミニーがぽつりと呟いた。
「……好きだよ」
 夜に染み入るような静かな声ですうっと身体に沁み込んでくるようだった。
「俺も好きだよ」
 パーシヴァルがそう返すと、ミニーは静かに微笑んだ。



 終わってしまえば何てことはない。いつも通りに戻るだけだ。
 祝賀会が始まる前、ミニーは自身が使っていた部屋を掃除していた。開けっ放しのドアがトントンと叩かれて「はいよ」と返事をすると大きな荷物が飛んできた。
「何これ?」
 投げて寄越した相手、パーシヴァルに眉を寄せて問いただすと「開けてみろ」とだけ彼は言った。嫌な予感しかしない。
 ごそごそと袋を漁ると出てきたのは予感通りであった。ふわっとしたワンピースとハイヒール。
「これを着ろと」
「言っただろ。貰ったら着るって」
「言った覚えはないけれどね」
「って言いながら着るんだ?」
 嫌だと思いっきり表情に出しながらもミニーの手は既に着替えに取り掛かっている。
「あ、ちょっと行かないでよ」
 立ち去ろうとするパーシヴァルを慌ててミニーは引き止めた。
「着替えるんだろ?」
「着替えるけれどさ。ファスナー」
 仕方ないなと言いながらパーシヴァルはドアを閉めた。
 嫌そうな顔をしていたくせに、ミニーはすっかり鼻歌交じりである。パーシヴァルがファスナーを上げてやると踊り出しそうな調子で彼女はありがとうと言った。
 髪は珍しく下ろしたままにするらしい。一度綺麗に櫛で梳かすと思い出したようにミニーは荷物を漁った。出て来たのはミニーにしては珍しく可愛らしい髪留めだった。少し髪を纏めてそれを留める。ベッドに腰を下ろしてヒールに足を通す。
パーシヴァルが手を差し出してやるとすっとその手を取って立ち上がった。
 その様はやけにこなれていた。
 パーシヴァルの手を離すと、ミニーはくるっと綺麗に一回転した。
「似合う?」
「ああ。とても素敵だ」
 するとミニーは勝ち誇ったようにふふんと鼻で笑った。
 少々予想外もあるが……可憐なワンピースに身を包んだミニーはいつもと少し違っていて、とても綺麗でパーシヴァルは少し見惚れた。
「行くか」
 と再び手を差し出してやると、ふわっとミニーがその手を重ねた。













☆☆☆☆☆☆☆

読んでくださってありがとうございます!

こんな変わり者が居てもおかしくない本拠地w
ギョームの名前が出てこなくて草稿には変態と書いてありましたw

以下、おまけです↓













「で?何か理由があるわけ?」
「ん?あぁ、昔ねドレスとヒールで大立ち回りする羽目になったことがあってね。あれはえらい目に遭ったよ。ちょっとしたトラウマだな」
「それは災難だな」
「災難で済めばトラウマになんかならないだろう」
「そうか……なぁ、次はどこ行くの?」
「船にでも乗ろうかな」
「海の向こうか」
「本当はハルモニアに向かってたんだけれどさ。何か暫くその言葉は聞きたくないよね」
「当てのない旅ってわけではなかったんだ」
「いや、そうでもない。ただちょっと調べごとしようと思ってたんだよね」
「ペギーが泣いたんじゃないの?」
「うん。うお~!!!って泣いてた」
「でも残らないんだ」
「そうだね」
「行き遅れるぞ」
「そっちこそ」
「俺は良いの」
「あっそ。あたしも良いの」
「ま、行き遅れたらそのうち俺が貰ってやるよ」
「そりゃどうも。……本当はさ、ついでにちょっと人探ししてんだよね」
「へぇ」
「ま、そのおっさんも良い歳だからどっかでぽっくり逝ってるかもなんだけれど。っていっても用があるのはそいつが持ってる名刀なんだけれどね。……何?」
「いや、本当に鍛冶屋だったんだなと思って」
「だから本当に鍛冶職人なんだってば。あーあー、こういう大きな戦争なら当たりかもって思ってたのになぁ」
「手掛かりとかないのか」
「うん。元々流れの傭兵だからね。噂を聞き付けた頃にはふら~っともう何処吹く風だよ。ここで会った昔馴染みからも結局何にも情報入って来なかったし。諦め時かなぁとも思うんだけれどね、もう少しだけ足掻きたいんだよ」
「好きなだけ足掻けば良いんじゃないか。待っててやるよ」


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